ホウ素含有物の添加

連鎖反応防止のため、連鎖反応を引き起こす中性子を吸収すると言われるホウ素化合物の添加が考えられ、一般的には原子炉でも使用されているとのホウ酸HBOの添加が考えられるが、水に対する溶解度は約4g/100g(20℃)であまり大きくない。つまり、ホウ酸はあまり水に溶けない。よって、ホウ酸を含むホウ素含有物の懸濁液として安全を図ることになろう。単にホウ酸のみによる懸濁液を考えても、過剰のホウ酸が結晶化して析出し、液循環の障害やウラン溶解の障害になって好ましくないものと思われる。なお、ホウ素やホウ素化合物の電極反応についても注意する必要がある。

つまり、反転電流による電解

デブリの二酸化ウランを金属ウラン(あるいは、単体ウラン)に還元するのが目的ではなく、二酸化ウラン中のウランを液中に漂出させるのが当面の目指すところである。そのためには、電解液を弱酸性のままにしておき、初めにデブリをカソードとして二酸化ウランの一部を単体ウランに還元し、次に電流の向きを反転させてデブリをアノードとして単体ウランを溶かし出すことが考えられる。ウランの溶解の有無は電解液中ウラン濃度の変化を調べればよい。

電流の流し方は、(デブリをカソードにする向きの電流)→(電流一時停止)→(デブリをアノードにする向きの電流)→(電流一時停止)→(デブリをカソードにする向きの電流)→・・・・・・・・この繰り返し。電流として単に交流を使用した場合は、デブリをアノードとした際、4OH-→2HO+O2+4e-で発生し酸素と単体ウランデブリ表面で反応してウランが再び二酸化ウランに戻ってしまうであろうから、単なる交流電解では効果がないであろう。

 

 

 

二酸化ウランの電解

核燃料は二酸化ウランとのことである。一部は放射線が水に作用して発生した水素との反応で金属ウランがあるかもしれないが、デブリ本体は、二酸化ウランジルコニアとかが混ざったものなのであろう。

アルカリ性液中でのカソード反応として、下のような反応がある。

UO2+2H2O+4e-→U+4OH-

すなわち、二酸化ウランを金属ウランに電解還元する反応である。

この金属ウランを、次に電解液を酸性にしてアノード溶解したら、ウランが液中に漂い出てくれるかもしれない。

 

水銀を多く使いたくないなら

デブリ側の電極構成として水銀をあまり多く使用したくないということであれば、デブリ表面に少量の水銀を接触させるだけに留めることになる。金属ガリウムでは、残念ながら水素ガスを発生しながら溶けてしまうので、水銀の代用とすることはできない。ガリウムウラン、水銀ーウランの状態図を見比べると、ガリウムの方がウランを流動化するように思えるが。

結局、可能な電極構成は、

デブリ+(Hg45U11)等のウランと水銀の合金+水銀+白金+銅線というところである。

 

 

デブリに水銀を接触させる方法

先端部にセラミックス製の水銀留め具を備えたフレキシブル管に水銀を入れる。水銀留め具は、その先端を強く押すと水銀が漏れ出てくる機構を備えたものとする。すなわち、フレキシブル管を延ばしていって、デブリに接触させたい。フレキシブル管の材質であるが、高分子樹脂性よりも鉄線を編んで作製したような金属性のほうが良い。樹脂性では、放射線により短時間で劣化してしまうであろう。

2017年3月23日の記事は、フッ素樹脂での絶縁を考えたものであるが、デブリに近い所では石英や無アルカリガラスでの絶縁にした方が良い。また、上記フレキシブル管の材質がイオン化傾向の低い物で、且つ、あまりアマルガム化しない物なら管中の水銀を銅線の代わりとして、電解を行うことができよう。白金の使用は不要となるし、絶縁対策も不要となる。

電気泳動

ウランのアノード溶解は、ウランを単に溶かすだけでなく、ウランのプラスイオンをカソード側へ泳動させるということにも意味があると思う。滞留をできるだけ起こさないようにするためである。とにかく、ウランイオンが漂出しても問題ないよう、デブリの冷却水は外部に漏れたりしていないことを祈る。

電解液は海水でよいか

要は、単なる水の電気分解とならないように電解液の検討が重要。デブリの冷却を循環液で行うため真水が利用されているのかもしれないが、真水では電気抵抗が大き過ぎるであろうから海水の利用が考えられる。そして、海水によるスケール付着にも耐える循環ポンプ等の使用である。スケール付着の影響が大きいようなら、電解液は多少酸性の方がよいであろう。また、臨界防止のための一定濃度のボロンの存在。

いずれにしても、デブリに見立てたウラン含有物を準備し、電解試験を行ってもらいたい。カソード側では、水素発生が主な反応であろうから換気に注意する必要がある。デブリ側でウランがイオンとなって液中に漂い出れば第一段階は成功である。そのための電解条件の検討である。