鉄枠のアノード溶解防止
ウランのアノード溶解中に、原子炉やその支持部材の主体であろう鉄鋼(鉄と炭素の合金)中の鉄もアノード溶解し、崩壊することが心配される。ウランと鉄の標準電極電位は、
U3O8の場合
核燃料のUO2は酸化されてU3O8となっている可能性が大きいが、この場合でも、次の
ような電極反応が予想される。
U3O8 + 2H2O + 4e- → 3UO2 + 4OH- (標準電極電位は不明)
このUO2は、更に前述のように以下の電極反応で単体ウランに還元され、
UO2 + 2H2O + 4e- → U + 4OH- (アルカリ液中標準電極電位:ー2.39V)
そして、極性を反転させ次の電極反応で単体ウランをアノード溶解させる。
U → U3+ + 3e- (酸性溶液中での標準電極電位:-1.789V)
なお、標準電極電位からするとウランのイオン化傾向は、マグネシウムMgとアルミニウムAlの間にあり、希硫酸等の酸性液中では水素ガスH2を発生しながらウランが溶けることが予想される。
但し、電解液の液性を硫酸酸性、硝酸酸性、塩酸酸性にすると原子炉の外枠も崩壊しかねず、単体ウランを弱酸性の水溶液中に安全に溶かし出すには、これまで記載してきたアノード溶解法が適切であると思われる。
デブリには、Fisson ProductといわれるストロンチウムSrやセシウムCs等の核分裂生成物が含まれ、現在も生成され続けているが、絶対量はウランが圧倒的多数であろうから、とにかくウラン酸化物の処理方法を優先して考えていく。
つまり、反転電流による電解
デブリの二酸化ウランを金属ウラン(あるいは、単体ウラン)に還元するのが目的ではなく、二酸化ウラン中のウランを液中に漂出させるのが当面の目指すところである。そのためには、電解液を弱酸性のままにしておき、初めにデブリをカソードとして二酸化ウランの一部を単体ウランに還元し、次に電流の向きを反転させてデブリをアノードとして単体ウランを溶かし出すことが考えられる。ウランの溶解の有無は電解液中ウラン濃度の変化を調べればよい。
電流の流し方は、(デブリをカソードにする向きの電流)→(電流一時停止)→(デブリをアノードにする向きの電流)→(電流一時停止)→(デブリをカソードにする向きの電流)→・・・・・・・・この繰り返し。電流として単に交流を使用した場合は、デブリをアノードとした際、4OH-→2H2O+O2+4e-で発生し酸素と単体ウランがデブリ表面で反応してウランが再び二酸化ウランに戻ってしまうであろうから、単なる交流電解では効果がないであろう。