デブリ片除去後の臨界防止
デブリで核分裂の連鎖反応が生ずるには、放射性物質が臨界質量以上で存在している必要があることから、放射性物質について、ある一定の臨界濃度Ccritical(x,y,z)があるように思われる。
現状、デブリで連鎖反応が起きていないようであるが、ウラン等の放射性物質の分布があまりにまばらでそもそも臨界とならないのか、それとも臨界となる配置にはなっているが、たまたま適度な(我々にとっては不都合な)熱中性子の侵入がないため臨界になっていないのかは不明である。
仮に、臨界になる分布(配置)状況であるとしよう。デブリを一部削り取り、それで残ったデブリにおける放射性物質の分布が、臨界がより起きやすいようになると、そのまま放置しておくことは危険である。そこで、削った部分に、放射性物質を含まないデブリ構成物を、削った分以上に補えば、臨界濃度から遠ざかる方向の処置となり、安全ではないかと考える。そして、順次、非放射性物質と置き換えるのである。
次の問題は、一度にどのくらいまでのデブリ片除去なら安全かである。危険な実験だが、デブリよりもより臨界になりやすいと思われるデブリ相当物をつくって、デブリ片の除去実験をするかである。また、熱中性子ができないように、水以外のクーラントの
使用も検討してもらいたい。
記録を残さない風土の役所にデブリ処理や管理は無理
責任追及されたくないためか、日本と呼ばれている国の役所には、記録をできるだけ残さないという風土があるようである。しかし、臨界発生の影響を回避しつつ行われるであろうデブリの取り出しは、一挙に行えないであろうから、些細な異常にも注意した記録を残して引継ぎつつ慎重に進められるべきであるという常識的感覚からすれば、このような風土を直ちに改めない役所には、デブリ処理や管理は任せられない。
取り出したデブリは数万年の管理が必要とされているが、記録を残さない風土の役所では、どこに置いているのか、誰が管理しているのかなど5W1H的情報が数年のうちに、役所にとって都合のよいように記録されてしまいそうである。
歴史書は、①作成者にとって都合のよいことと、②作成者にとっては不都合だが知れ渡っているため認めざるを得ないこととが書かれていると感じているが、デブリ処理や管理についての役所の記録文書が、歴史書のようになっては大迷惑である。
デブリ処理への思い、雑感
人権は最重要。しかし、人権の否定思想は、他者が尊重すべき人権には含まれない。たとえば、差別発言など他者の人権を否定する発言(表現)は、表現の自由として守られる人権の中には入らない。差別発言を許すなら、差別を許さないとの思いは強いものではないということになってしまう。
原発のような、廃棄処理法が不完全な製造物は、快適な環境の維持にとっての敵であり、そのような製造物は許さないと言い続けなければ、環境保護への想いは強くないことになってしまう。
同じく、デブリ処理を考え続けなければ、デブリ処理への思いは強くないということになってしまう。
1グラムのウラン235が、すべて核分裂するときに発生するエネルギーは、1.95×(10の7乗)キロカロリーとのこと。できるならウラン鉱石にし、地球に戻してやりたい。
デブリ処理に直接関与している研究者や技術者等は、国・上司・恩師等に忖度することなく、頑張ってもらいたい。一般人としては、忖度しなくても済むような環境を調えてやる事であろう(サッカーのハリル前監督の貢献は、有名選手の優先起用に忖度しなくて済む情況をつくり、現監督が采配し易くしたことではないかと思う。)。
デブリのその場での収納・処理について
デブリがある近辺で、ホウ素化合物で内外面とも被覆されたカプセルにデブリ片を収納・処理する方法では、カプセルを多数準備して、同時、または順次、収納・処理していくわけであるが、この場合でも問題は、炉・容器・建屋からデブリを分離したりデブリ片にする際、あるいは、デブリ片のハンドリングの際に連鎖反応が生じるかもしれないということである。
デブリ片は、収納前にホウ素化合物の液に浸漬させ、全表面をホウ素化合物で被覆してからハンドリングすることが望ましいが、その意味では、格納容器等からのデブリの分離やデブリ細断等の際、ホウ素化合物の液中で行う方が安全であるように思う。
なお、ハンドリング中、デブリ片が落下したりすることが無いように、デブリ片の保持は、摘まみ且つすくい上げるほか、吸引する方法も併用すべきであろう。
デブリ片の溶解回収手順
デブリの小塊をカプセル等に入れて、硝酸等で溶解し、原子炉建屋外に排出する手順について
①デブリを細断する。
②表裏をホウ素化合物で被覆した耐酸性デブリ溶解容器(密封可能なボックスやカプセル等)で、この容器に酸や窒素ガス等を供給できる配管と、容器内の液体等を外部に排出するための配管を備えたものをデブリの近くに置く。
③「プルトニウム水溶液でのプルトニウム最小臨界質量」未満であるデブリ片を、すくい上げるなどして重さを確認しながらデブリ溶解容器に入れる。
④デブリ溶解容器を閉じる。
⑤供給側配管、排出側配管とも弁を開き、供給側配管から硝酸等を入れる。
⑥デブリが溶けたと考えられる時間経過後、供給側配管から水を入れ続け、デブリ溶解物を排出側配管から取り出す。
⑦水の供給を止め、デブリ溶解容器、及び配管を窒素ブローする。
⑧供給側配管、排出側配管とも弁を閉じる。
⑨デブリ溶解容器を開ける。
⑩ ③に戻る。
なお、安全のため、供給液にはホウ素化合物が含まれていることが望ましいし、デブリ溶解を慎重に行うためには弱酸性下での電気溶解が望ましい。
いずれにしても、取り出した物の分析・物質収支の管理が重要である。
最小臨界量(質量)未満ごとでのデブリ処理
デブリ処理中に核分裂の連鎖反応が発生しないように、デブリの最小臨界質量未満ごとでの処理が考えられないか。金属ウランに比べ金属プルトニウムの最小臨界量は小さく、少量でも臨界になってしまうらしい。更に、水溶液状態ではウランやプルトニウムの最小臨界量は、金属の場合に比べかなり小さくなり、又、金属の場合と同様に、(ウラン水溶液の最小臨界量)>(プルトニウム水溶液の最小臨界量)とのこと。
そこで、安全のため、デブリをプルトニウムとみて、プルトニウム水溶液の最小臨界量未満単位ごとの処理が考えられないか。
たとえば、内外部からの中性子放出・流入を抑えるためにBN被覆した耐酸性ボックスで、デブリの小塊(プルトニウム水溶液の最小臨界量未満であると考えられる小塊)を囲み込み、その中に硝酸を注入してデブリを溶かしてしまうとか。耐酸性ボックスの容積が、プルトニウム水溶液の最小臨界量未満相当で、注入硝酸量が少量なら、臨界を生じさせないで済むと思うが。