デブリ片の溶解回収手順

デブリの小塊をカプセル等に入れて、硝酸等で溶解し、原子炉建屋外に排出する手順について

デブリを細断する。

②表裏をホウ素化合物で被覆した耐酸性デブリ溶解容器(密封可能なボックスやカプセル等)で、この容器に酸や窒素ガス等を供給できる配管と、容器内の液体等を外部に排出するための配管を備えたものをデブリの近くに置く。

③「プルトニウム水溶液でのプルトニウム最小臨界質量」未満であるデブリ片を、すくい上げるなどして重さを確認しながらデブリ溶解容器に入れる。

デブリ溶解容器を閉じる。

⑤供給側配管、排出側配管とも弁を開き、供給側配管から硝酸等を入れる。

デブリが溶けたと考えられる時間経過後、供給側配管から水を入れ続け、デブリ溶解物を排出側配管から取り出す。

⑦水の供給を止め、デブリ溶解容器、及び配管を窒素ブローする。

⑧供給側配管、排出側配管とも弁を閉じる。

デブリ溶解容器を開ける。

⑩ ③に戻る。

 

なお、安全のため、供給液にはホウ素化合物が含まれていることが望ましいし、デブリ溶解を慎重に行うためには弱酸性下での電気溶解が望ましい。

いずれにしても、取り出した物の分析・物質収支の管理が重要である。

 

 

最小臨界量(質量)未満ごとでのデブリ処理

デブリ処理中に核分裂の連鎖反応が発生しないように、デブリの最小臨界質量未満ごとでの処理が考えられないか。金属ウランに比べ金属プルトニウムの最小臨界量は小さく、少量でも臨界になってしまうらしい。更に、水溶液状態ではウランプルトニウムの最小臨界量は、金属の場合に比べかなり小さくなり、又、金属の場合と同様に、(ウラン水溶液の最小臨界量)>(プルトニウム水溶液の最小臨界量)とのこと。

そこで、安全のため、デブリプルトニウムとみて、プルトニウム水溶液の最小臨界量未満単位ごとの処理が考えられないか。

たとえば、内外部からの中性子放出・流入を抑えるためにBN被覆した耐酸性ボックスで、デブリの小塊(プルトニウム水溶液の最小臨界量未満であると考えられる小塊)を囲み込み、その中に硝酸を注入してデブリを溶かしてしまうとか。耐酸性ボックスの容積が、プルトニウム水溶液の最小臨界量未満相当で、注入硝酸量が少量なら、臨界を生じさせないで済むと思うが。

 

デブリを硝酸で溶かす場合

硝酸に耐える材質として一般的なのは、黒鉛であろうが、黒鉛中性子反射体となるもので、連鎖反応を促進する材料とされている。一方、炭化ホウ素BCは制御材であり、又、硝酸にも耐える。よって、容器としては炭化ホウ素が望ましいが、強度上の問題がありそう。そうすると、黒鉛を炭化ホウ素で被覆した材料が実用的と思われる。

建屋底外部の受け皿製作法

建屋底外部の受け皿製作は、その現場で行う。別の所で製作した受け皿を、浮かせた建屋の下に入れるということではない。建屋を浮かせる事は困難であろうし、仮に浮かせたとしても、振動等でバランスを失って落下するような事があるかもしれない。このようなことが起きないように、少しずつ受け皿を形作っていくことを提案する

まず、受け皿の外端の方から作製していく。中心に向かって斜め下に地面を1m四方ほど掘り、その穴に型枠を入れコンクリートを流し込む。受け皿中心から反対の箇所でも同様の作業を行い、バランスを保つようにする。コンクリートが固まったら、その下に、コンクリートが落ちてこない程度の広さの作業用スペースを掘り開ける。そして、その穴の下部もコンクリート敷にし、上の天板コンクリート落下防止用治具を設置する。そして、再び中心に向かって斜め下に地面を掘って型枠を入れコンクリートを流し込む。この際、固化時収縮があっても先の天板コンクリートと接続するように十分な重なり確保する(同一面状にするよりは、階段状となるようにした方が確実であろう。又、最初から鉄筋入りが望ましい。)。このようなことを、対称性を確保しながら各外端部から進め、最終的に一つの受け皿を製作する。

原子炉建屋の底外部に受け皿がほしい。

原子炉や放射性物質が付着した建屋を解体して撤去する場合、取り残しが無いようにするため、建屋の底外部にコンクリート製の受け皿を準備しておきたい。受け皿設置に際しては、建屋全体を上部や側面外部から支持しておくものとする。なお、この受け皿は、クレーンによる吊り上げ移動ができるように、被吊り上げ治具を備えたものとする。

ホウ素含有クーラントをデブリの機械的取り出し時に使用

デブリ機械的に取り出す際、粉塵の舞い上がりを押さえるためと思うが、散水するとのことである。この水には、連鎖反応を引き起こす熱中性子(thermal neutron:減速して運動エネルギーが小さくなった中性子)を吸収するためのホウ素が含まれることになろう。

デブリへのホウ素含有冷却水の供給を停止した場合、崩壊熱によって水分が蒸発し、ホウ素含有物がデブリ全体を覆うのではないかと想像する。ホウ素の融点は2300℃であるが、ホウ酸の融点約185℃、酸化ホウ素の融点約577℃(理化学辞典等による)とのことで、放置しておくとホウ素含有物による被覆が流れ出してしまい、デブリが熱中性子と作用してしまう危険が生まれる。そこで、デブリ表面が高温にならないうちに液体窒素を入れて表面温度の上昇を押さえることを提案する。

また、デブリ機械的に取り出す際、ホウ素含有物被覆の無いデブリ面が生ずるが、デブリとの機械的接触部に供給するクーラントにもホウ素を入れるようにすれば、連鎖反応防止に有効であると思われる。

 

 

連鎖反応の防止のため、多孔質炭化ホウ素等でデブリをカバー

ウラン235に1個の中性子が当たると、約2.46個の中性子を発生しながらウラン核分裂し、この発生した中性子が別のウラン235に当たるということを繰り返して連鎖反応が起こると考えられている。デブリを電気溶解した際、ウランが電解液中に漂い出るが、液中のウラン235の量は少なく液側で連鎖反応が起こる可能性はかなり低いものと思う。むしろ、液中ウラン235核分裂による中性子が、デブリ側に向かった場合、連鎖反応が生じやすくなるであろう。

そこで、中性子吸収材となるホウ素を含む炭化ホウ素でデブリを覆い、液側からの中性子デブリ内のウラン235に当たることを妨害すれば、連鎖反応の防止に有効であると思われる。但し、デブリを炭化ホウ素で完全に被覆してしまうと電解できないので、電解液の出入りが可能なように炭化ホウ素は、多孔質状・網目状・よろい板状等であることになろう。