窒素ガスを流す二重管の構造について

内管と外管の間に窒素ガスを流すのは、外管に亀裂や孔が生じていないかどうかを調べるための気密検査であるが、密閉しての圧力変化調査では、配線を延ばしていったことに対する応答が遅いように思われるし、また、容積や温度の影響が大きいので小さな異常も見落とさないようにするためには適さないと思われる。従って、窒素ガス流量を監視する方法が適していよう。

因みに、1モルの気体で、理想気体なら  PV=RT

            実在気体では  PV=zRT

( P:圧力、 V:容積、 T:絶対温度[°K]、 R:気体定数、z:圧縮係数 )

なお、窒素ガスが配線の先端まで行って戻ってくるようにするためには、内管と外管の間に隔壁を設けて往路と復路に分ける必要がある。しかし、上述のように気密状況の監視のためなので、往路と復路を完全に区切る必要はなく、ガス流のガイドとなるような隔壁で十分である。たとえば、らせん板を内管の外側、あるいは外管の内側に設けてガス流のガイドにすることが考えられる。

 

 

デブリ用配線を二重構造の物の中に入れ、間に窒素ガスを流すわけ

デブリ用配線・電極をデブリに向かって延ばし、デブリに電極を形成するまでの間に、配線が液に触れて途中で断線したり、回収できずに原発構造物内に配線・電極材料を残してしまいデブリの量を増加させてしまうということがあるかもしれない。

そこで、電極形成部を除くデブリ用配線本体をたとえば二重管の内管に入れ、内管と外管の間に窒素ガスを流して、戻ってきた窒素ガス流量が減少していないかどうかを常時監視することにする。窒素ガス流量の減少があれば、外管に亀裂や孔が生じたということなので、直ちに引き上げて修理・補強して再使用するということにすれば、前述の不都合をかなり軽減できるように思われる。

また、デブリに電極形成後も一定流量の窒素ガスを流し、戻ってきた窒素ガス流量を常時監視して外管の異常を検知できるようにし、異常があれば配線・電極を直ちに引き上げることができるのならば、配線の絶縁・保護材料や内管・外管として、放射線による劣化はあるがフレキシブルな高分子材料を使用してもかまわないものと思われる。

二重構造型デブリ用電極

 デブリ用配線・電極を水中を通さずに、原発の支持構造体の外部から点検口等を介してデブリに近づけることができればその方が望ましいが、多分難しい。

そこで、デブリ用配線・電極を保護管(内管)に入れ、更にその外側に外管を設け、内管と外管の間に窒素ガスを流すようにした二重構造物を水中に入れて、デブリに近付ける方法はどうであろうか。 このような、ウランの電気溶解によるウラン回収法にこだわるものではないが。

とかく、人格破壊を恐れてか、自説にこだわって考えを変えることができない人々が目につく。特に、世の中のリーダーと言われる人や、リーダーであった人である。もっとも、このような人々も他人からの指摘ではなく、自ら新しい考え方を手に入れたら、従来からの自説を簡単に取り下げるのであろうが。

デブリ用液状電極の検討

 デブリ用電極として水銀やガリウムを思いついた理由は、

核燃料が散らばっているであろうから、それらをできるだけ全部捕らえるため液状金属で面状にカバーしたらどうかと思ったからである。その意味では、ガリウムの融点が約30℃であるが、これよりも更に低温で液状化しているGa-In-Sn合金の利用も考えられる。

 ちなみに、

       U → U3+ + 3e-         標準電極電位:ー1.789V

       Ga → Ga3+  + 3e-         標準電極電位:ー0.529V

       Fe → Fe2+   + 2e-       標準電極電位:ー0.4402V

で、ガリウムイオン化傾向ウランと鉄の中間であり、ガリウム電極下で核燃料のウラン酸化物が単体ウランにまで還元された後、中性~酸性水溶液中で最初に溶け出すのはウランであり、次にガリウムで、鉄のイオン化防止にもなる。

 しかし、ガリウムやGa-In-Sn合金は、鉄と合金を形成したり鉄鋼の粒界腐食を引き起こしたりするなど、原子炉構造材を脆化させてしまう懸念がある。水銀は鉄とアマルガムを作らないとはいえ、このような構造材脆化は水銀利用の場合も注意しなければならない。従って、構造材を外側から支える対策をあらかじめ行っておくべきである。

原発のカソード防食等

原発処理は長期間になるということで、原子炉やその支持構造体が腐食で崩壊しないように腐食防止が考えられているであろう。実際に鉄の電位ーpH図を参考にしながらカソード防食が行われているかもしれない。

そこで、ついでにウランの電位ーpH図も睨みながら、デブリをカソードとし、たとえば白金電極をアノードとした電解を検討してもらえないであろうか。電解液は酢酸等の弱酸性でも可能ではないかと思っているが、確実なのは中性~アルカリ性下で、次のようなカソード反応とアノード反応で、まず、デブリ中のウラン酸化物を単体ウランまでに還元することである。

カソード反応: UO2 + 2H2O + 4e- → U + 4OH- (アルカリ性溶液  中での標準電極電位:ー2.39V)

アノード反応: 4OH- → O2 + 2H2O + 4e-  (アルカリ性溶液中での標準電極電位:+0.401V)

鉄とウランでは、ウランの方がイオン化傾向が大きいから、普通の水の中でウランの方が先に溶け出して鉄の腐食を防止する。溶け出たウランは回収すればよい(ウランの安全な回収が目的である)。当然、核分裂の連鎖反応防止のため、ホウ素化合物の存在下でのことであるが。

・上記のことが実際に生ずることを実験で確認してもらいたい(くれぐれも、連鎖反応が起きないように注意しながら)。

ウランの、強酸による溶解回収に対する電気溶解による回収のメリットは、より安全であること

デブリの回りに、ホウ素Bを多量に介在させて核分裂反応が臨界に達するのを防止しようとしても、硝酸等の強酸でウランを溶かしていると急にデブリの溶解が進み、ウラン濃度が臨界を超えてしまうおそれがある。ホウ素による中性子吸収で連鎖反応が生じないとしても危険である。

一方、ウランをアノードとして酢酸等の弱酸中で電気的に溶解させる場合、ウランの溶解量は電流の多少でコントロールでき、電気を流すのを止めたらウランの新たな溶解は直ちに止まる。従って、ウラン濃度の臨界防止が容易であり、より安全であると考えられる。

電解液中配線ケーブル問題

難しいのは、電解液中の配線ケーブルのことである。高放射線下で、どのようにして絶縁を確保するか。プラスチックスでは、分子間の架橋が放射線で切れ、ぼろぼろになってしまうであろう。現在の所、不十分な絶縁であるが、鉄鋼製スパイラル管の外側にセラミックスファイバー製ブランケットを巻いたような構成が思いつくくらいである。ガンマー線対策ということで鉛を含むセラミックスファイバーが望ましい。

土木建築工事によって原子炉建屋全体を高強度セラミックス製容器に入れたような状態にできるのなら、ボロンを高濃度にして臨界防止をしながら硝酸等を加えてデブリ中のウランを溶かし、液としてウランを回収できるのであろうが。